焦点 アフガンで交錯する大国の利害

                編集部

2001.11.20 207


 米英のアフガン攻撃に反対するロンドンのデモ 


 アメリカでの衝撃的な「同時テロ事件」から二カ月、このテロへの報復を理由とした、米英軍のアフガニスタン攻撃開始から一カ月あまりがすぎた。

 B52爆撃機による絨毯爆撃や1万五〇〇〇ポンドという通常爆弾としては最大の気化爆弾「デイジーカッター」までつかった、およそ「テロ犯人の逮捕が目的」とは言えない大規模爆撃で、アフガンの子ども・女性・老人たちの犠牲が増え続けることに、イスラム諸国のみならず、当事国のアメリカ・イギリスをはじめとして、世界各地で大規模な反戦行動がわきおこった。一〇月末には、アメリカの七五都市、その他二〇カ国の四〇都市以上で、数千人から数万人の統一行動が展開された。

 こうして、ブッシュ米大統領やブレア英首相の「反テロ報復攻撃」の実態が露呈するなかで、米英ロなどの支援をうけた、反タリバンの軍閥連合「北部同盟」は、ブッシュ政権のシナリオをふみこえて、アフガンの首都カブールへ侵攻、さらに「第三勢力」の軍閥もいっせいに動きだして、かつて自分たちが支配していた地域をタリバンから奪回した。

 事態は、ソ連軍撤退後の内戦時にもどったかのような様相を呈しているのだが、ここにきて、早くから取り沙汰されていた「タリバン後の新政権構想」が、アメリカやEU(ヨーロッパ連合)諸国はもとより、ロシアや中国、さらには中央アジアのアフガン周辺諸国の思惑と利害がからんだ問題として、浮上している。

 アフガン新政権めぐる確執

 国連安全保障理事会は、「地域の安全と治安を保障するため」アフガンへの多国籍軍の派遣を承認したが、その具体的な構想については明らかにしていない。というのも、この決議はもともと、新政権構想の枠組みがかたまった後に、提出されるはずのものだったからである。

 今回の事件で「にわかに形成された国際的反テロ連合」は、自国の少数民族への弾圧を正当化するという共通の利害でむすびついたものである(ロシアのチェチェン、中国の新疆ウイグル、イギリスの北アイルランド等々)。しかし、こと新政権構想は、となると、各国の利害は対立せざるをえない。

 カブール「陥落」の直前にニューヨークで開かれた、「6+2」(アフガン周辺六カ国と米ロ)外相会議は、「幅広い基盤をもつアフガン政府をめざす」とうたった。しかし、新政権にタリバン「穏健派」を含めたいパキスタンと、北部同盟主導をのぞむロシアやイラン、それに民族同胞の発言権をもとめるウズベキスタンやタジキスタンだけをみても、思惑は対立する。

 さらにアメリカは、日本をまきこんだアフガン人道復興支援会議で、新政権の主導権をねらっていたのだが、さっそくイギリスやフランスからの横やりがはいり、日米共催で計画していた閣僚級会談は、次官級の予備会合に格下げされた。

 他方で、「テロリストの逮捕」はどうなったかというと、ウサマ・ビンラディンの「育ての親」(CIAが援助した)であるアメリカのブッシュは、こともあろうに、「外国人テロリスト」を特別軍事法廷で裁くという大統領令に署名し、アメリカがテロリストと指名した「外国人」(ビンラディンだけではない)を秘密法廷で裁いて処刑できるという、まさに「ファシズムのグローバル化」をすすめているのである。

 反テロという名の中央アジア争奪戦

 しかし、ブッシュの「テロリスト云々」という言いぐさが、自分の蒔いた種に困惑し、逆上している独善的なアメリカの傲りだということは、世界の人びとが指摘している。

 そして、米ソ冷戦後の世界で、なぜ、アフガンがこれほど問題なのか、ということが浮上してくる。

 九〇年代なかばに、国連の明石康(当時・人道担当)は、「現在のアフガンに対する外部からの干渉は、すべて石油やガス・パイプラインをめぐる闘いと関連している。問題は、石油会社や地域大国が自分たちの目的のために、タリバンに貢いでいることだ」と語っている。

 イラン、アラビア海、インドをむすぶ十字路にあり、中央アジアと南西アジアの間にある、「アジアの心臓」としてのアフガンは、六〇〇〇年まえから幾度も紛争の中心にされてきたが、一九世紀末に、この地域の覇権を争うロシア帝国と大英帝国が、現在の国境線をひいた後、現在にまでつながる資源争奪がある。

 とりわけ、中東のパレスチナ問題が「和平」どころか、いっそう深刻化する一方で、世界で未開発のまま残された最後のエネルギー資源をもつ中央アジアと、陸に閉ざされたこの資源を市場とむすびつける輸送路をめぐる、各国・各企業間の激しい競争は、アフガン問題の戦略的な位置を、いやがおうでもたかめているのである。

 それは、今回の報復戦争について良く言われる、ブッシュ家の軍需産業や石油産業との癒着という以上の、帝国主義的世界戦略の問題である。

 米石油会社ユノカル(第一二位)は九〇年代なかば、パイプライン建設計画のためにタリバンと接近し、クリントン政権もこれを支持してタリバン支援に傾いたが、この政策はその後変更をせまられた。しかし今では、英系石油メジャーのアモコや米最大のエネルギー企業エンロンなどが、中東依存からの脱却をはかって、タリバン政権後のアフガン支配に期待をいだいている。

 小泉政権による戦略なき派兵

 それにしても、小泉政権が「テロとの闘い」と称して、日米安保条約や周辺事態法も飛び越えて、グァム島からペルシャ湾にいたる地域に自衛艦隊を派兵し、違憲とされていた集団的自衛権の行使に実質的にふみこんだことは、日本を「参戦国」にかえた。自衛隊は、いまや、太平洋戦争における帝国海軍の軍事行動範囲さえ、ふみこえてしまった。

 日本が経済主義的帝国主義政策をとるなら、こと中東政策に関してはアメリカと一定の距離をおいてきた「中立の立場」を利用する、という選択もあったはずだ。実際に今年の春、政府は北部同盟とタリバンの東京会議を提案していた。しかし、小泉政権はそうしなかった。

 他方で、同じ「敗戦国」のドイツは、連邦軍派兵をめぐって連立政権が大揺れに揺れている。

 日本の反戦運動も、「憲法があるから派兵できないはずだ」という意識からの脱却が、必要なときだ。


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