海外事情 高揚する英国のイラク攻撃反対行動

                        垣田 章

2002.10.20 218


 イラク攻撃反対デモで埋まったロンドン

 ブレア英首相の対米協力の姿勢には、きわめて強固なものが感じられる。一〇月初頭の労働党年次大会の基調演説でも、第二次世界大戦における米軍の貢献に触れて、その恩返しを忘れてはならぬという一節がある。対イラク問題については、サダム・フセインを国連の意志に従わせなくてはならぬ、独裁者と対峙しようとする際には、平和の唯一のチャンスは戦争への構えを崩さないことだ、と述べている。
 
 こうした首相の意志を反映するかのように、ドイツに駐留する英国戦車部隊は、一〇月下旬には中東に展開する準備をしていると、BBC放送は報道した。来年初めとされるイラク攻撃は一段と現実味を帯びてきている。しかしこういう状況に対して、英国市民の反戦行動はますます激化の方向にある。

 空前のデモの洪水

 九月二八日にはロンドン中心部で大デモがあり、ハイドパークで大規模な抗議集会が開かれたことは、日本の各新聞でも報道された。主催者は主要な労働組合とCND(核兵器廃絶運動)など市民団体で組織された反戦大連合で、これに英国ムスリム協会も共同主催者となっている。参加者は主催者側発表で三五万人、警察の発表で一五万人と日本の各紙(毎日、朝日、日経)の報道は似たりよったりであった(もっとも読売だけは何故か数万人)。これでは、やや規模の大きな反戦デモがあり、主催者側はいつもの如く参加者数の鯖をよんだととられかねない。

 そこでガーディアン紙の報道する当日の状況を伝えておきたい。同紙はまず、この平和行進が史上空前のものであったと言う。デモの終点ハイドパークでのスピーチラリー(演説者は労働党左派のトニー・ベン氏、ロンドン市長のリビングストン氏、国連の元武器査察団員のスコット・リッター氏など)に参加していたのが一五万人であり、全参加者は四〇万人に達するとしている。そして反戦大連合のスポークスマン、マイク・マルクーシ氏の「参加者の数を圧縮しようとするのは体制側の願望に過ぎない。実に多くの階層の市民が街頭に出てきて、ブレア首相ももはや無視できない」とする発言を紹介している。
 
オブザーバー紙に掲載された一参加者のレポートもデモの大洪水を裏付けるものであった。それによると、昼頃出発点のウォータールー橋を出て、国会議事堂、中央官庁界ホワイトホールを通って午後三時半にハイドパークに達した。携帯電話で友人に連絡すると、まだ出発点を出ていないと言うではないか。参加者はまだ溜まっていたのだと述べている。ロンドンの中心部は「ストップ・ザ・ウォー」の人の波で埋めつくされたのである。

 イラク攻撃反対を強める世論

 この空前のデモの後の一〇月一日に実施されたガーディアン紙の世論調査では、イラク攻撃賛成は四ポイント下がって三三%になっている。賛成でも反対でもないとする者の数は一八%から二四%に上昇しているから、世論が一致して賛成という情況ではないようである。こうした世論動揺の要因として、ガーディアン紙は九月二〇日の政府文書のあいまいさを指摘する。イラクに対する軍事行動の根拠を明確にするものとしながら、推定に基づく状況証拠では、世論の強い印象づけに失敗したとしている。
 
反戦大連合は一〇月三一日を「プロテストの日」と定めて、反戦行動の継続を訴えている。今後の動向も見据えていきたい。

http://www.stopwar.org.uk/が参考になる
 


かきた あきら/福岡女学院大学名誉教授

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