焦点 やはりやっていた!自衛隊のイラク侵略戦争荷担

     −対テロ特措法と呉−

                        湯浅 一郎

2003.6.20 226


  大型輸送艦(戦車揚陸艦)「しもきた」

 二月中旬、ブッシュ政権は、イラク周辺に一五万人の軍隊を集結させ、国連による大量破壊兵器に関する査察の最終報告の如何に関わらず、フセイン政権をつぶすため一方的な戦争を仕掛けようとしていた。そうした緊迫した情勢の中で、日本政府は、「テロ対策」を口実としたアフガン戦争の後方支援部隊として、二月四日に広島県・呉港からタイ国の重機などの輸送のため大型輸送艦(実質的には戦車揚陸艦)「しもきた」を派兵した。これに先立って三日には、随伴する護衛艦「いかづち」も神奈川県・横須賀港を出ている。

 「しもきた」の派兵は、一二月のイージス艦「きりしま」と同様、日本の戦後史を画する重大な事態である。「しもきた」は「おおすみ」型輸送艦の二番艦で、二〇〇二年三月、呉に配備されたばかりの新鋭艦である。防衛庁は、「輸送艦」と称しているが、軍事的実体はLST(Landing Ship Tank )、つまり戦車揚陸艦である。LCAC(Landing Craft Air Cushion )という高速で走る現代版強襲上陸用舟艇を使用して大型戦車を海外の地に強襲上陸させる能力を持つ、きわめて攻撃的な艦船である。

 そもそも専守防衛を旨とする自衛隊が、海外侵攻ができる能力を備えた軍艦を持つこと自体が既に本来の枠を踏み外している。ましてや、そのような艦船を戦時下において海外に派兵することは、「物資の輸送」と言えども絶対に許されることではない。海外への強襲上陸作戦を行うことができる艦船を、戦時下に海外に登場させることは、中国、韓国を初めとしたアジアの国々に強い警戒心を呼び起こし、日本に対する不安を増幅させることは必至である。

 これに伴って民間技術者の派遣も続いている。イージス艦「きりしま」は出航二日後に艦内発電用のガスタービンエンジンが故障し、修理のため民間人技術者が派遣された。補給艦「ときわ」も故障し、二隻の修理で民間技術者九人が派遣された。昨年七月以来、民間人の現地派遣は計七回、二五人になる。「対テロ」特措法は、自衛隊を支援する民間人の現地派遣を想定していない。紛争に巻き込まれた場合の補償など何の規定もない一方で、防衛庁―納入企業という力関係の中で民間人の派遣が強要されていることは不当きわまりない。

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 そして三月二〇日、イラク攻撃が開始され、インド洋に展開する米英軍の主力は、すべてイラク攻撃に集中していった。その時、「対テロ」アフガン戦争への協力をめいうった自衛隊の作戦行動と、イラク攻撃への荷担の線引きは限りなく曖昧となる。自衛隊が給油した米艦船が、知らぬまにイラク攻撃に関わったり、日本のイージス艦の収集した情報を米軍がイラク攻撃のために利用することも起こりうる。戦前、日本政府は、イラク戦に参加している艦船への給油は(距離が離れているから)あり得ないとしていた。私たちは、海上で、戦争に従事している部隊にとって、そのような境目は、現実に厳守されるはずがないと主張してきた。

 五月になって憂慮されていたことが現実のこととなっていたことがわかった。五月六日、イラク攻撃に加わり、大量の精密誘導爆弾やクラスター爆弾を投下し、イラクの人々を殺してきた空母キティホークが、事実上の母港である横須賀基地に帰還した。私たちの税金で維持されている基地から出た艦船が、戦争で多くの人の血を流したこと自体が問題である。キテイホークのトーマス・パーカー艦長は、四月六日、艦内放送で「すでに約二四〇〇万ドル分の爆弾を投下した。(イラクには)まだ殺される必要がある者たちがいる」と述べた人物である。この世に「殺される必要がある者」が存在するというのか。この報道に接したとき、私はこみ上げる怒りを抑えることができなかった。

 その同じ人物が、「キティホークの機動部隊がイラク戦争中、海上自衛隊から間接的に洋上で約八〇万ガロンの燃料補給を受けた」と報道陣に明らかにした。これが事実だとすれば、「間接的に」とは言え、日本の予算で自衛隊が購入した燃料が、イラク攻撃に関わったことになる。

 更に五月二一日の「毎日」は、イラク戦争参加のためインド洋を通る米軍の全艦艇が日本のテロ特措法に基づく燃料補給の対象となっていたと報じた。米艦艇がインド洋を通る際、対アフガニスタン作戦(不朽の自由作戦)の任務を兼ねていたためだという。米軍は今年に入りイラク戦争準備のため、米西海岸や日本の各基地から空母をはじめとする艦艇を次々とペルシャ湾に集めたが、米海軍司令部(バーレーン)に到着するまで、テロリスト逃亡阻止作戦の任務も兼ねていた。開戦前後にはペルシャ湾に一〇〇隻以上が集結していた。インド洋に派遣されている海自の補給艦は主に米軍の大型補給艦に燃料を提供し、米補給艦がペルシャ湾に向かう途中の空母や艦艇に燃料を補給していたのである。

 これについて防衛庁は「米補給艦から燃料がどこに渡っているのかはわからないが、提供した燃料は法律の目的外に使わないことを米と約束している」とした上で「燃料を補給した時点で不朽の自由作戦だけに従事し、イラク戦争に従事するまでにその分の燃料を使いきれば問題ない」と迷答をくり返している。しかしイラク攻撃に関与した米艦艇への後方支援に、自衛隊が間接的とはいえ関わっていたことは重大である。日本は、間接的にイラク戦争に参戦していたことになる。

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 テレビで連日のように放映された「キテイホーク」艦載機による爆撃、随伴艦(例えばミサイル巡洋艦カウペンズ)からのトマホークの発射。大量破壊兵器の廃棄を求めて、「国連憲章」にも反して先制攻撃を仕掛けたイラク戦争では、結局、「大量破壊兵器の存在」を確認できない。一方で、イラクの民間人、イラク兵、米英兵、ジャーナリストなど、少なくとも六〇〇〇人以上の人々が、亡くなり、その一人一人に遺族が残っている。更にメソポタミア文明発祥の地を破壊し尽くした点も許せざることである。イラクで起こったことは、どれ一つとっても元に戻ることのない絶対的損失であり、いかなる理由があろうと許されない戦争犯罪である。そして自衛隊が、その一翼を担っていたことは、決して忘れてはならない重大事である。

 六月六日、有事関連三法案は、参議院でも異常とも言うべき九〇%近くの賛成で可決され、戦争法は成立してしまった。これにより、米国の戦争に自衛隊が直接参加する道が開かれ、自治体、市民には戦争への協力が強要されることになった。これは、日米新ガイドライン体制によって必然的に生じる結果であり、日米共同作戦が日本列島全体を戦場化する危険が濃厚になり、世界に広げるべき憲法九条をないがしろにするものである。別の視点からは、自衛官から戦死者が出ることを前提とした法律ができたと言うことでもある。

 自衛官とその家族に、今ほど不安と不満の声がひろがっている時はかつてない。インド洋では、職務命令とは言え、乗員とその家族が、戦時下の精神的にも、肉体的にも苦渋に満ちた生活に疲弊しているであろう。その活動は、米軍が止めない限り、いつ終わるともしれない状態である。実際、対テロ特措法の二年延長が、自衛隊の更なる派兵をもたらすイラク新法と並んでまことしやかに提案されようとしている。今、自衛官とその家族の人権が極度に踏みにじられようとしている。反基地運動の焦点の一つはここにある。


ゆあさ いちろう/ピースリンク広島・呉・岩国

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